Credit: IMF Photos

今週のチャート

高頻度データが浮き彫りにする世界経済成長の減速

経済成長が何重もの逆風に晒される中で、高インフレを抑制するために政策がさらに引き締められるだろう。

世界経済成長の見通しには、ロシアのウクライナ侵攻、インフレ抑制のための利上げ、そしてパンデミックの余波である中国のロックダウンやサプライチェーンの混乱などが入り混じった、異色の逆風が吹き荒れている。

先月発表されたIMFの最新の世界経済見通しでは、来年の世界経済の予想成長率が2.7%に引き下げられており、世界GDPの3分の1以上を占める国々で、今年から来年に経済の縮小が見込まれている。また、IMFが主要20か国・地域(G20)サミットに向けて作成した最新の報告書で論じている通り、見通しの暗さは最新の高頻度指標でも裏付けられている。

「今週のグラフ」が示しているように、多くのG20構成国を追跡した購買担当者景気指数(PMI)は、過去数か月で悪化の一途を辿った。この調査ベースの指標は、製造業とサービス業のモメンタムを評価したものである。

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グラフで図解されている通り、G20では多くの構成国で、今年前半に「拡張」領域にあった指標が、縮小を示唆する水準まで低下した。これは先進国と新興市場国の両方に見られ、経済成長減速のグローバルな性格を浮き彫りにしている。

一部の主要国では第3四半期のGDP公表値が予想外に上昇したものの、10月のPMIは、欧州を中心とした第4四半期の低迷ぶりを示している。中国では、パンデミックによる断続的なロックダウンと不動産部門の不振が鈍化の要因となっており、PMIデータのみならず、投資額や工業生産量、小売売上高にも減速が見られている。中国が貿易に果たす重要な役割に鑑みれば、他の国々に甚大な影響を及ぼすことは不可避であろう。

世界経済の失速が顕在化しつつあっても、政策当局者はインフレの抑制を優先すべきである。インフレは生活費危機を引き起こし、脆弱な国や低所得国に最も大きな被害をもたらしている。IMFのG20報告書で強調されているように、マクロ経済政策の環境は極めて不確実性が高い。

それでも大半の国では、インフレを抑制し、債務の脆弱性に対処するために、財政・金融政策を継続して引き締める必要があるだろう。IMFでは、今後数か月に多くのG20構成国でさらなる引き締めが行われると予想している。こうした動きは今後も経済活動の重石となり、金利に影響を受けやすい住宅などの部門は特に影響を受けると思われる。

世界経済が直面している課題は膨大であり、低迷する経済指標は、今後さらなる課題が待ち受けていることを示唆している。しかし、慎重な政策措置を講じ、多国間で協調的な取り組みを行えば、世界はより強靭で包摂的な成長に向かって進むことができるだろう。