国際通貨基金(IMF)は国家へ融資する際、当該国の中央銀行が、受け取った資金を管理する能力と、信頼できる情報を提供する能力があるという保証を求めます。この目的を達成するため、IMFはデューデリジェンスの一環としてセーフガード評価を実施しています。

IMF資金の活用にあたっては、国際通貨基金協定によって、「適当な保障」が求められています。その目的は、加盟国への融資が期日までに返済されるようにして、資金を必要とする他の加盟国への融資の実現を図ることです。セーフガード措置の例としては、融資額上限や融資条件、誤った報告や延滞への対策、中央銀行のセーフガード評価が挙げられます。

中央銀行のセーフガード評価の内容

セーフガード評価は、中央銀行のガバナンスと統制の枠組みを診断・確認するものです。IMFが拠出する資金を保護したり、重要データに関して間違った報告(誤報告)のリスクを最小化したりするために、まとめてGELRICと呼ばれる6分野の評価を実施しています。

Internal controls
ガバナンスの仕組み(G)

中央銀行運営を独立的かつ綿密に監督するため、適切な構造と仕組みが存在するように、ガバナンス機関が設立されているか。理事会、監査委員会、総裁、副総裁といった主要な意思決定機関は、中央銀行への信認義務を果たす上で、職務にふさわしい努力をしているか。主要なガバナンス機関の構成はどうか。こうした機関への任命はどう行われているか。任命された者は、職務を果たすために必要な権限を持っているか。

External audit mechanism
外部監査メカニズム(E)

中央銀行が毎年の財務諸表を公開しているか。これら財務諸表は、国際基準に沿って、独立監査を受けているか。外部監査人を選定したり、入れ替えたりする手順は何か。監査は、その質を担保するために、しっかりとした内部手順に沿って実施されているか。中央銀行の理事会や監査委員会など、監督責任のある機関と外部監査人がコミュニケーションをとっているか。

Legal structure and autonomy
法的構造と独立性(L)

中央銀行が適切な水準の独立性を保てるような法的枠組みが存在するか。この法的枠組みは、GELRICの他5分野に貢献しているか。中央銀行法によって、自律性や透明性など、強力なガバナンスの仕組みが備わっているか。抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)が中央銀行の内外で導入されているか。政府による介入や決定の無効化から中央銀行が守られているか。

Financial reporting
財務報告(R)

透明性の高い会計・財務報告を行う上で、優れた慣行の国際基準を遵守しているか。遅滞なく財務報告書が公表されているか。公開されている財務情報や土台となる会計データと、IMFプログラムのもとで報告されている通貨データとの間に一貫性があるか。

Internal audit mechanism
内部監査(I)

中央銀行の内部監査機能が国際基準を遵守しているか。同機能は、中央銀行のリスク管理・統制・ガバナンス手順の有効性を評価する上で、十分な能力と組織的な独立性を確保しているか。モニタリングと報告の仕組みが十分に確立されているか。

Internal controls
内部統制(C)

中央銀行が堅固な統制の環境を構築・維持できるように尽力しているか。運営・財務のリスクを十分に管理しているか。外貨準備管理、融資、通貨・銀行業務、サイバーセキュリティ、業務継続計画のための統制がなされているか。通貨プログラムのデータを正確かつ遅滞なくIMFに報告する上で、内部手順が有効か。

IMFによるセーフガード評価の実施方法

評価は、中央銀行、国家政府職員、IMF職員がそれぞれ役割を果たします。中央銀行は、財務諸表、内部監査・外部監査の報告書、中央銀行に関連する法制、内部統制の報告書または要約など、GELRICの各分野についてIMFに情報を提供します。IMF職員はこれら資料を確認します。また、セーフガード評価を完了させる上で、評価対象の中央銀行を訪問することが一般的です。IMFは、中央銀行職員やガバナンス機関、外部監査人と会議を設け、最後に報告書で、特定された脆弱性に対策を講じるための提言を、優先順位付けして提示します。これら提言は、プログラムのベンチマークの一部を構成する場合もあります。

Safeguard assessment how does the IMF do it

セーフガード評価の公表有無

Internal audit mechanism

セーフガード報告書については、報告書完成前に、政府機関が公式コメントを出します。セーフガード報告書の内容は機密で、IMF理事会とも共有されません。その代わりに、IMF理事会には、各国担当職員による報告書の中で、セーフガード評価結果の主要部分と提言が要約されて報告されます。また、2年ごとに、テーマ別のセーフガード活動の報告書が提出されます。

中央銀行が同意する場合、セーフガード報告書は機密情報として世界銀行と共有するほか、適切な場合には、欧州中央銀行とも共有します。また、評価対象の中央銀行の同意のもとで、IMFは情報を求めるドナー国に対し、セーフガード評価結果を機密扱いで説明することもできます。

IMF職員は、加盟国への貸付額がプログラムモニタリング終了条件である基準値を下回るまで、提言内容の実行状況をモニタリングします。その後のモニタリングは通常、中央銀行の年次外部監査の結果を確認するのみです。

適格条件の厳しいフレキシブル・クレジットライン(FCL)短期流動性枠(SLL)の取極については、完全なセーフガード評価を行う必要性はありません。その代わりに、これら取極については、中央銀行に対する直近の外部監査結果を確認します。

既存取極の拡大、直前の評価から18か月以内に設定される後継の取極についても、セーフガード評価は不要です。また、優れた実績を持ち、過去4年以内に評価を完了させた中央銀行についても、セーフガード評価は求めません。

政府予算に対する直接的な支援としてIMF融資が実施されている場合、中央銀行と政府は、互いの役割に関して、またIMF対する返済義務に関して、合意しなければなりません。加盟国が融資の例外的な利用を求め、政府予算への直接的な支援としてIMF融資額の25%以上が使用されると見込まれる場合には、国庫を対象にした財政セーフガード評価の実施が必須となります。

IMFがセーフガード評価を採用した理由

IMF資金について、誤報告や、流用が疑われる事態が生じたことを受けて、IMFはセーフガード評価を実施する方針を2000年3月に導入しました。現在、セーフガード評価は、IMFによる融資の取り組みにとって重要な柱となっており、通常は5年ごとに見直されます。 リンク先のページに、現在までに実施された、中央銀行のセーフガード評価の一覧を掲載しています。

 

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更新は 2023年3月でした