財政モニター

気候変動の岐路

温暖化する世界における財政政策

2023年10月

概要

財政モニター 2023年10月

財政モニター

本報告書では各国の緩和政策を吟味し、「気候目標の達成」、「債務の持続可能性」、「政策の実現可能性」のバランスを図る政策当局者のトリレンマを示した。本報告書の新たな所見によれば、これらの共同目標を達成するための唯一の方策は、歳入政策と歳出政策の組み合わせを入念に調整することである。カーボンプライシングは不可欠なツールであり、ポリシーミックスに組み込むべきだ。しかしそれだけでは不十分で、市場の失敗に対処する政策や、低炭素技術に民間の融資と投資を呼び込む政策で補完しなければならない。グリーン移行中に脆弱な世帯や労働者、コミュニティを保護するには、強固な給付措置が必要である。

ポリシーミックスの財政コストは国によって様々だが、特に新興市場国と発展途上国にとっては大きな課題となりうる。こうした国は既に、大規模な適応や開発のニーズに加えて、多額の債務と金利上昇に直面しているからだ。財政余地が限られた国は、このような課題を切り抜けるために、歳入を動員する課税能力を築いたり、歳出を効率化したりすべきであろう。政策は、民間部門が気候変動対応策の融資と投資へ積極的な役割を担うよう促すものにすべきだ。グローバルな連携を通じて、実践的な世界カーボンプライシングや外部金融支援を推し進め、定評ある低炭素技術の知識移転を円滑にすることは、発展途上国の気候変動への取り組みを支えるうえで不可欠である。

分析章

第1章 気候変動の岐路 : 温暖化する世界における財政政策

2023年10月の「財政モニター」第1章は、気候変動に対処して気温上昇を抑える財政政策の適切な組み合わせを考察する。