財政モニター

政策正常化に向けて

2023年4月

概要

政策正常化に向けて

本報告書では、変則的な成長やインフレ動態、ショック緩和のための財政支援を特徴とするパンデミック以降の複数のショックによって、財政がどのように変動してきたかを検討している。最近起こった金融部門の混乱は、厳しい資金調達環境と債務脆弱性に関する懸念の高まりによってすでに不透明かつ複雑になっていた経済見通しを悪化させた。このような不安定な環境おいては、財政政策は最も脆弱な層を支援しつつ、物価と金融の安定を回復するために金融政策との一貫性を優先すべきである。金融環境の激変期には、財政の脆弱性に対処するための財政引き締めも求められる。そのために、各国政府は、一貫性のあるマクロ経済政策を推進し、債務の脆弱性を徐々に低減させ、将来のショックに対処するための余力を生み出すような信頼性のあるリスクベースの財政枠組みを策定して、財政バッファーを再構築することに重点を置かなければならない。

2023年4月 財政モニター 分析章

第1章 政策正常化に向けて

20234月「財政モニター」の第1章は、パンデミック以降の変則的な経済状況が財政政策の効果にどのような影響を与えてきたかを検討した上で、最も脆弱な層を保護しつつディスインフレーションと金融の安定を支えるために政策の一貫性が必要であるとしている。

第2章: インフレとディスインフレに財政政策が果たす役割とは

本章では、予期せぬインフレが債務比率に余裕をもたらす場合がある一方、債券保有者の予想を裏切り続ける試みは無益、あるいは有害であると歴史が証明していることを示す。物価調整の慣行は国によって著しく異なる。従って、調整方式を見直す際に、政策当局者は特定グループの保護とインフレ長期化の回避のバランスを取る必要がある。インフレの再分配効果に関しては、消費パターン、所得、資産の3つの経路に左右される。また、本章は財政政策がインフレに与える影響を評価し、対象を絞った政策が金融政策のインフレ抑制を補完しつつ、生活費危機で最も苦悩する人々を保護できることを示している。