各国が1票を投じる国際連合総会と異なり、国際通貨基金(IMF)の議決権と意思決定は、加盟国の相対的な経済的地位を反映します。新興市場国や発展途上国が果たす役割の増大といった、世界経済の変化に自らのガバナンス構造が遅れをとらないように、IMFは取り組んでいます。
総務会は、IMFの最高意思決定機関です。各加盟国が1名ずつ任命した、総務と総務代理で構成されます。総務は加盟国が任命しますが、通常、財務大臣か中央銀行総裁がその役を担います。
総務会は、権限の大半をIMF理事会に委譲しています。ただし、クォータ増額の承認、SDR(特別引出権)の配分や取り消し、新規加盟国の承認、加盟国の強制的脱退、さらには国際通貨基金協定および付随規約の改正などの点では、権限を保持しています。
理事の選任は、総務会が行います。また、国際通貨基金協定の解釈に関して、最終的な決定を下すのも総務会です。国際通貨基金協定に別段の定めがない場合、総務会の決定は、対面か電子的手段での投票を行い、その多数決によって下されます。
通常、IMFと世界銀行グループの総務会は、年に一度、10月に会合を開き、両機関の活動について意見を交わします。IMFと世界銀行グループの年次総会は、ワシントンDCで2年続けて実施された後、3年目に別の加盟国が持ち回りで開催地となるのが慣例です。
国際通貨金融委員会(IMFC)と 合同開発委員会という、ふたつの大臣級委員会が総務会に助言します。
総務会内の25の加盟国が国際通貨金融委員会(IMFC)を構成します。IMFCは年2回、IMF・世界銀行の 春季会合と年次総会の際にそれぞれ会合を開き、国際通貨・金融制度の管理や、国際通貨基金協定の改正案に関して協議するほか、世界経済に影響を与えている各国共通の懸案事項について話し合います。各会合後、IMFCは見解をまとめ、発表します。この見解は、IMFの業務指針となります。IMFCは、コンセンサス方式を採っており、公式の投票は行いません。
合同開発委員会 は、発展途上国の経済問題に関して、IMFと世界銀行の総務会に助言します。この委員会は、25の委員で構成され、委員には通常、各国の財務大臣か開発大臣が就任します。本委員会は、開発の重要課題に関してコンセンサスを取る場です。
IMFでは、25人の理事で構成される理事会が日常業務を執行しています。理事会は、IMF職員による加盟国経済の年次審査から、世界経済にとって重要な政策課題まで、 IMF業務の全側面について協議します。 決定は基本的にコンセンサスを得ますが、正式な投票を行うこともあります。各加盟国が投じる票の数は、基礎票(全加盟国に均等分配)とクォータにもとづく票の合計となっており、各加盟国のクォータが票の数を決定する仕組みです。理事会は公式会合の後、多くの場合、見解を示す総括文書を公表します。また、政策をめぐる複雑な事項については、予備段階で非公式の会合を開催することもあります。
IMF専務理事は、理事会の議長を務める一方、職員のトップでもあります。IMF理事会によって選出される専務理事の任期は5年間で、再任可能です。専務理事選出の際、IMFの総務と理事は、いずれのIMF加盟国からも候補者を推薦できます。理事会による専務理事の任命は、多数決での決めることもできますが、近年では理事会のコンセンサスに基づいて決定されてきました。筆頭副専務理事と3人の副専務理事が、専務理事を補佐します。
IMFが全191加盟国をしっかりと代表し、効果的な機関であり続けるように、IMFのガバナンス構造も急速な世界経済の変化に合わせて進化しなければなりません。
この目標を実現するためにIMF総務会が行った第14次クォータ一般見直しには、次のような広範囲にわたる改革が盛り込まれ、2016年に発効しました。
異例の規模でのクォータ増加と、配分の変更:クォータの合計額が前回2008年に設定された水準の2倍へ引き上げられたほか、大々的な再配分によって、発展途上国にクォータと議決権が割り当てられました。
最貧国の加盟国の議決権を維持:IMFが低所得国向けに展開している「貧困削減・成長トラスト(PRGT)」適格国で、1人当たり所得が国際開発協会(IDA)の基準値を下回る国々を対象に、議決権を守る仕組みが導入されています。
世界をより正確に代表する、新たな理事会:国際通貨基金協定の改正に伴い、全理事が投票によって選出されることになり、理事会の代表性を高める動きがとりやすくなりました。
2020年に総務会は、クォータ増額なしに第15次見直しを完了し、2023年12月15日までに第16次見直しを終わらせるよう呼びかける 決議を採択しました。理事会は、第16次見直しの一環で、クォータとIMFガバナンスの妥当性を再検討することになっています。
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更新は 2022年9月でした