この20年でサブサハラアフリカは大きな経済発展を遂げました。極度の貧困の水準は3分の1低下し、平均余命は2割延び、1人あたりの実質所得は平均で約50%増えています。しかし、サブサハラアフリカによる持続可能な開発目標(SDGs)達成はまだ道半ばにあります。
この目標を達成する上で、サブサハラアフリカには資金調達が必要となります。資金調達を可能にする方法のひとつは、借入を行うことです。賢明に行われるのであれば、政府による借入は理にかなっています。つまり、道路や学校、病院への投資といった生産性と生活水準の向上につながるプロジェクトのために借り入れた資金を用いる場合です。そして、政府がそのような投資から債務の返済に足るだけの利益を回収できれば、借入を行う価値はあります。
しかし、サブサハラアフリカで借入を行う余地は以前よりも限られています。2011年から2016年にかけて公的債務の水準は急上昇した後、その対GDP比の平均値は約55%で推移し続けています。サブサハラアフリカ諸国では、国内外の金融市場における市中借入への依存度も高まっています。過去10年の債務残高増加分のうち、70%以上がこの種の借入によるものです。こうした非譲許的融資へのシフトは、債務返済費用の増大と、社会インフラ投資の減少を意味します。
サブサハラアフリカ諸国が借入だけでは持続可能な開発目標を達成できないというのは明らかです。
では、何が求められているのでしょうか。12月2日にIMFとセネガル政府が国連およびフランスの「エコノミスト・サークル」と協力して開催した会議では、まさにこの問題を取り上げました。セネガルは経済変革や雇用創出、生活水準向上を目指して「セネガル新興計画(Plan Sénégal Émergent)」を開始しており、ダカールはこの会議の開催地としてうってつけでした。そして、会議でも出席者の皆さまにお伝えしましたが、政策担当者が「テランガのライオン」の愛称で知られるサッカーのセネガル代表チームから刺激を受けられるという点でもダカールは格好の場所でした。同チームは昨年のアフリカネーションズカップで私たちに強い印象を残しました。
バランスの取れたアプローチ
テランガのライオンの成功は、バランスの取れたアプローチに基づいています。攻撃への意欲と守備の必要性との間のバランス、そして選手それぞれの奮闘とチームとしてのパフォーマンスの間のバランスです。これと同様に、アフリカも開発資金の調達と債務持続可能性の維持との間で、また、人々への投資とインフラの改良との間で、そして長期的な開発目標と差し迫った目前のニーズとの間で正しいバランスを取ることを模索しています。要するに、バランスの取れたアプローチが求められており、その実現にはすべての利害関係者が腕に磨きをかけることが必要となるのです。
開発と債務の間に正しいバランスを見出すために、私たちの誰もが実行できる強力な戦術が5つあります。そのうち3つはサブサハラアフリカの政策担当者向けのもので、残りの2つは国際社会と民間セクターが対象です。
第一の戦術は、歳入増を図ることです。サブサハラアフリカはこの分野で他地域から後れを取っています。私たちの試算では、歳入徴収額が潜在的な歳入をGDP比で3~5%ポイント下回っています。この差を縮めることは可能です。ウガンダがその良い例です。同国では、IMFの技術支援を得て行われた改革により、歳入が対GDP比で2012年の11%から昨年はほぼ15%にまで増加しました。
第二の戦術は、投資をより効率的なものとすることです。現状、サブサハラアフリカにおけるインフラ支出のうち公的資本ストックとなるのは約60%にすぎません。1ドル支出するごとに、資産に値するものはおよそ60セント分しか得られていないのです。
第三の戦術は、公的債務管理を強化することです。正確かつ包括的でタイムリーなデータを提供することにより債務の透明性を高めることが主な目標となります。それは、投資家との間に信頼を構築し、国内資本市場をサポートし、債務返済費用を削減する上で役に立ちます。
グローバルチーム
しかし、各国がこの3つの戦術をとるのと同時に、私たち全員がより多くのことを行う必要もあります。国内資金を増やすことは重要ですが、それだけでは十分ではありません。国内で多大な努力を払ったとしても、推定される持続可能な開発目標関連ニーズの4分の1しか満たすことができないと見られています。そのため、グローバルなチームがより多くのことを行う必要があるのです。
そこで第四の戦術ですが、先進国には、特に援助に関してより多くのことができるはずです。政府開発援助(ODA)をドナー国の国民所得の0.7%にまで引き上げることが目標です。また、ドナー国は収益率が確実に高いプロジェクトに贈与や譲許的融資を行うことを通じて、インフラにより注力することもできるでしょう。
第五の戦術として、大きな資金調達ギャップを解消するために、民間セクターのプレーヤーも一層取り込む必要があります。これには、国外からの直接投資を増やすことも含まれます。持続可能な開発目標達成の責任は、まずは公的部門の取り組みによって果たされるべきですが、それだけで話は終わりません。何よりも、官民双方のプレーヤーが最終的にともに勝ち組となるようにする必要があります。「ブレンド・ファイナンス」がその良い例となるかもしれません。贈与と譲許的融資、市中からの資金調達を組み合わせるやり方です。
リスクシェアリングを促進するにはどうすれば良いでしょうか。あらゆる人々のためになるように開発金融を拡充するにはどうすれば良いでしょうか。こうした点こそが、アフリカが今取り組んでいる問題の一部です。しかし、私たちがアフリカのために力を合わせて行動すれば、全員にとって利益になるというのは明らかです。セネガルには次のようなことわざがあります。「ひとりでできることは、二人でやればもっとうまくできる」。これこそが、テランガのライオンの精神です。私たちがサブサハラアフリカで実現しようとしていることの根底には、これと同じ精神があるのです。