速やかな実行が可能なIMFの緊急融資制度(500億ドル)についての質問と回答(Q&A)

最終更新日:2020319

202034日にクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事によって公表されたように、IMFは様々な融資制度によって脆弱国を支援する体制を整えており、例えば低所得国・新興市場国向けには、速やかな支払いが可能な緊急融資(最大500億ドル)が用意されています。このうち100億ドルは、ラピッド・クレジット・ファシリティ(RCF)を通じて、最も貧しい加盟国向けに無利子の融資として用意されます。

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コロナウイルス対策のために緊急融資を提供する上でIMFが活用できる融資制度は何ですか?

IMFが活用できる融資制度は2種類あります。ラピッド・クレジット・ファシリティRCF)とラピッド・ファイナンシング・インストルメントRFI)で、それぞれ2009年と2011年に創設されました。これら制度は、完全なプログラム準備の必要なく、資金面での緊急支援を加盟国が受けられるようにします。コロナウイルスのような緊急事態に対処する政策を加盟国が実行できるよう支援するために、こうした融資の支払いは非常に速やかに実行されえます。

ラピッド・クレジット・ファシリティによる融資は低所得国を対象とします。この融資は無利子で行われ、支払猶予期間は5年半、最終満期は10年です。IMF加盟国は本融資制度をこれまでに29回活用してきました。例えば昨年、サイクロン・イダイの襲来を受けたモザンビークが本制度を利用したほか、2014年〜2015年にはギニアとリベリアがエボラ熱流行対策のために本制度に基づいて融資を受けました。ラピッド・ファイナンシング・インストルメントに基づく資金支援はスタンドバイ取極と同じ融資条件(現在の金利は約1.5%)に従います。返済期間は33か月から5年です。IMF加盟国は本融資制度を過去に5回利用しました。例えばIMF2016年、ここ数十年で最大級の地震に見舞われたエクアドルに対して、ラピッド・ファイナンシング・インストルメントによる緊急融資を提供しました。

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IMFの融資制度に基づいて利用できる緊急融資500億ドルの内訳は何ですか?

ラピッド・クレジット・ファシリティ(RCF)とラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RFI)に基づき、加盟国は自国のクォータ(IMF出資割当額)の最大50%を引き出すことができます。緊急融資の制度下で、低所得国向けには合計で100億ドルの緊急融資が用意されています。新興市場国については、資金面での支援をIMFに要請する可能性がある加盟国について検討を行い、準備金が潤沢な国々、金融市場からの資金調達が常時可能な国々、メキシコのようにIMFの予防的な融資枠がすでに設定されている国々を除きました。これら新興市場国向けには合計400億ドルの緊急融資が用意されています。

合計で約130か国の国々が、これら2種類の融資制度の下で、また、既存取極の拡大によって、最大500億ドルの資金を利用できます。いずれの場合についても、IMFもしくは世界銀行、または両機関に対して延滞債務がある国々や、債務の状況が持続不可能だと私たちが評価した加盟国は除外されています。IMFの方針に基づき、こうした状況での融資を行うことはできません。

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国が融資を受ける際、IMFから資金を受け取るのは具体的に誰でしょうか?

コロナウイルスに端を発する国際収支上のニーズは直接的な医療費や経済的な波及効果など様々な原因から生じえます。融資は政府当局(政府、中央銀行)に対して行われます。

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IMF専務理事はブログ記事の中で現在までに多くの国々がIMFからの支援に関心を示したと記述しています。これらの国々は通常のIMF融資プログラムに関心を示しているのでしょうか?それとも、専務理事が今月前半に発表した緊急融資500億ドルに関心を示したのでしょうか?もしくは、これら融資2種類の組み合わせについて関心を示したのでしょうか?

融資に関心を示した国々の中には、すでに融資プログラムが現在設定されている国もあれば、融資プログラムが設定されておらず至急の融資を模索している国もあります。

関心を示すことは必ずしも正式な融資要請がなされたことを意味せず、関心を示した国が支援の選択肢を議論していることになります。こうした国々の多くにとって、最も合理的な選択肢はゲオルギエバ専務理事が500億ドルの用意があるだろうと発言した緊急融資制度となるでしょう。

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コロナウイルス関連の影響に対策を講じる支援として用意された500億ドルの資金については、どのような適格条件がありますか?どの加盟国も申請ができるのでしょうか?すでにIMF融資プログラムが設定されている国についてはどうですか?また、債務持続可能性を確立しなおすために債務再編手続が実行されている国についてはどうでしょうか?

どの加盟国も申請を行うことができます。ラピッド・クレジット・ファシリティ(RCF)とラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RFI)の緊急支援制度に基づき、支援には条件が設定されています。例えば、申請国の債務が持続可能であるか、持続可能性が確立されつつある必要があります。また、国際収支上の緊急ニーズが存在し、危機対策のために適切な政策を実行していることも条件です。

IMF融資取極がすでに存在している国については、取極の拡大が適切になるかもしれません。また、既存取極をタイミング良く拡大できない場合には、ラピッド・クレジット・ファシリティかラピッド・ファイナンシング・インストルメントの申請が可能です。

前述のとおり、IMFが支援を行うためには、債務持続可能性が存在するか、確立されつつあると考えられる必要があります。債務再編手続が行われている場合には、その成功可能性とあわせて、必ず考慮に入れます。これはストレス下にある国々を支援するために全関係者が行っている努力を明確に示しています。

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利用可能な資金500億ドルについて、ある国が申請を行った場合、どのような手順とスケジュールが予定されているかを説明してください。

加盟国から正式な支援の要請があった場合、IMF職員は適格条件の評価を行い、政府当局に対して融資を受ける意向を示す「趣意書」を作成できるように協力します。また、IMF職員はIMF理事会に提出するスタッフレポートを作成します。

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融資による支援が実行されるまでにどの程度の時間がかかりますか?

加盟国からの要請に迅速にこたえられるように進めていますが、融資実行までにかかる時間は個別状況に大きく左右されます。

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最近の動向を踏まえると、現行融資制度の財源500億ドルは十分なのでしょうか?

緊急融資制度下でなされうる申請に対して、この500億ドルは大きな効果を持ちますが、IMFの融資能力は総額で約1兆ドルです。

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IMFはどのように1兆ドルの財源を活用できるのか改めて教えてください。

IMFが加盟国に対して非譲許的な条件で行う融資は、加盟国が払い込むクォータ(出資割当額)を原資としています。多国間・国別で合意される借り入れが、クォータ資金を一時的に補うことによって第2、第3の防衛線となります。世界経済危機時には、IMFによる加盟国への支援を可能にする上でこうした借り入れによる資金が重要な役割を果たしました。

IMFは現在、合計で約9,750SDRの財源を持ちますが、これはつまり、流動性バッファーを除き、また、対外収支の状況が良好な国からの資金のみが融資に活用される点を踏まえ、7,150SDR(米ドル換算で約1兆ドル)の融資能力があることを意味します。

より詳細な情報についてはファクトシート「IMFの財源」をご確認ください。

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総額1兆ドルの融資財源を増強する必要性は出てくるでしょうか?この点は議論されていますか?

IMFは加盟国からの融資要請にこたえるだけの十分な財源を持ち、困難な局面にある加盟国を支援するために利用可能な資金を駆使する用意があります。