「西部開拓時代を去る: 暗号資産を管理し、ブロックチェーンを解き放つ」

2023年12月13日

(演説原稿)

アンニョンハセヨ!

IMF専務理事として韓国を訪問することをかなり長い間楽しみにしており、この会議で行われるデジタル通貨に関する重要な議論に参加できることを嬉しく思います。  秋副総理、金融委員会の金副委員長、そしてIMFで緊密に協力した親愛なる友人の李総裁に深く感謝いたします。

遠い国からの来客とともに焚き火の周りで団らんした時代のように、本日は、私に物語を語らせてください。

それは過去、未来、そして現在の物語です。これは、革新者と法律違反者、また、リスクと機会の物語です。そして、暗号資産とブロックチェーンの話です。

過去

まず、アメリカの歴史の埃っぽい西部開拓時代から始めます。

大半の暗号資産は「裏付けなし」または「裏付けが不十分」な形でこの世に現れました。本質的な価値を欠き、価格の乱高下が問題でした。不安定な準備金へ依存していたために崩壊したものもあります。

暗号資産は本当にリスクの高い資産であり、多くの家計がそれを経験を持って学びました。多くの家計が実際のお金を失いました。大金です。 

西部開拓時代は厳しい時期でした。保安官がほとんどおらず、法律や規制も限られていたため、事故や犯罪が多発する時代でした。マネーロンダリングやその他の違法行為は、年間数百億ドルと推定されています。            

つい先月、暗号資産(仮想通貨)交換業で世界最大手の「バイナンス」の創業者が、マネーロンダリングの罪で有罪を認めました。その直前は、破綻した暗号資産交換業大手FTXの創業者が詐欺などの罪で有罪判決を受けました。

簡単に言えば、過去15年間、仮想通貨の世界は輝かしい評判を築いていません。また、困難を脱したわけではありません。

将来

この先どうなるのでしょう。未来に目を向けましょう。

暗号資産が普及した場合の影響も考慮する必要があります。このシナリオは突飛なものではありません。 

まず、暗号資産がなくなることはありません。ビットコインは2022年4月以来の最高値で取引されています。暗号資産の時価総額はここ1年間で2倍になりました。そして今日でも、インターネットの検索量は「ビットコイン」という単語が「健康とウェルネス」の約20倍、「気候変動」の7倍、となっています。

また、チェイナリシスによると、暗号資産の採用は、データが不足しているものの、特にインド、ナイジェリア、ベトナムなどの新興市場国で頻繁に見られます。IMF職員が現在進めている調査によると、ブラジルでは外国証券に費やす100レアル中、25レアルが暗号資産に充てられています。

課題は、暗号資産の採用率が高いことで、マクロ金融の安定性が損なわれる可能性があることです。

まず、最近のIMFスタッフペーパーに示されているように、仮想通貨化(自国通貨の代わりに仮想通貨を使用すること)は、金融政策の波及を損なう可能性があります。保有する人がほとんどいない通貨の金利を上げることに何の意味があるでしょう。

さらに、外貨保有の上限などの資本フロー管理対策が回避されてしまう可能性があります。

また、仮想通貨は、徴税が不安定になったり、徴税の執行が困難になったりした場合、財政の持続可能性を損ないかねません。

それは、われわれ全員が避けたい未来です。

現在

こうした事態を避ける方法を見出すために、現在に戻り、米西部から東アジアに行き、韓国の豊かな伝統から学びましょう。

私はハングルに魅了されています。私と一緒に訪問中の仲間に説明すると、これは15世紀に世宗王によって導入された韓国語の文字です。その単純な構造は、エリートだけがアクセスできる非効率的な文字に取って代わりました。古代の文字からスマートフォンの文字まで、ハングルは実に順応性が高いことが証明されています。そして、ハングルは美しいです。

ハングルは完璧な公共財であり、音節や単語を構成するための明確なルール と、24文字のアルファベットという最小限でありながら堅固なインフラストラクチャを備えています。

これは、われわれが今日達成しようとしていることと似ています。われわれの目標は、暗号のリスクを回避するためのルールと、その技術の一部を活用するインフラストラクチャを提供することで、より効率的で相互運用性があり、アクセスしやすい金融システムを作ることです。それぞれ個別に見ていきましょう。

仮想通貨のルール

IMFと金融安定理事会(FSB)は、加盟国との有益な議論を経て、昨年9月に暗号資産のルールに関するガイダンスを提供する報告書を公表しました。

次の要点を抽出します。暗号資産を法定通貨または公式な通貨にしないこと。マネーロンダリングやテロ資金供与対策を含む法律、基準、規制を明確にし、一貫して適用すること。明確な税制を確立すること。暗号資産の分類を明確にし、強固な法的基盤を提供すること。また、暗号資産プロバイダーはクリックひとつで移転できるため、規制の差異の悪用を回避するために世界で方針を調整することです。

各国は、このガイダンスを法律に制定し、監督者や監査役を訓練し、コンプライアンスを強化しています。例えば、韓国はマネーロンダリング防止法を改正し、暗号資産に関する新しい法律を制定することでリーダーシップを発揮しています。FSBとIMFは、これら全ての面で加盟国を支援しており、さらに多くのことを行う態勢でいます。

これらのルールは、私たちを仮想通貨前の世界に戻したり、イノベーションを潰したりすることを意図したものではありません。西部開拓時代に詐欺師(伝説的な功績にもかかわらず)だけしかいなかったわけではないように、仮想通貨のすべてが詐欺ではありません。

インフラを模索する民間部門

優れたルールは、イノベーションを促進・導くことができます。例えば、銀行は、仮想通貨ブームによって洗練され、普及したブロックチェーン技術を使用して、新しい取引インフラを模索しています。何兆ドルにも上る日々の資産取引コストを削減し、スピードを上げるほか、現在低利回りの預金口座に満足している人々への金融アクセスを拡大することを望んでいるのです。

今日、銀行は紙で資産を作り、それをカストディアンに預け、仲介者に連絡し、誰が何を所有しているかについて、それぞれのバージョンを調整しています。機能はしますが、お金がかかります。代わりに、資産をブロックチェーン上のエントリーまたは「トークン」として確立し、ブロックチェーンを更新して取引することを想像してみてください。

大きな利益がある可能性はないでしょうか。ブロックチェーンは、すべての取引当事者がアクセスでき、透明性と改ざん防止性があり、決済が迅速です。トークン形式の金融資産は、小口投資家にサービスを提供するために、いくつかに分割することもできます。また、取り引きを自動化し、まとめて、同時に実行することもできます。これにより、資産が正当な所有者に届く前に取引相手や取引自体が失敗するリスクが軽減されます。 

私は先月、シンガポール金融管理局のプロジェクトガーディアンの下での銀行の試験運用にて、これを自分の目で見ました。

誤解のないように言っておきますと、試験運用から実際の環境に移行するには、適切な法的枠組みの確立など、まだ多くのハードルを乗り越えなければなりません。 

公共インフラ

採用の目途を予測することはできませんが、準備は必要です。適切なインフラストラクチャを計画することが重要です。

ここでは公共部門が重要になり、このインフラが公共政策の目標を確実に満たすようにします。

先ほど説明したブロックチェーンは、安価で、安定していて、信頼できるものでなければなりません。資産とそれを取引する契約との間の相互運用性を確保する必要があります。資産の支払いのために、ブロックチェーン上にある安全なお金、つまり中央銀行デジタル通貨を必要とするでしょう。また、マネーロンダリングやテロ資金供与対策などの国際基準の遵守が非常に重要であるほか、資本フローの管理など、各国の政策の優先事項との整合性も大事です。

これは偶然ではなく、私がシンガポール・フィンテック・フェスティバルで紹介したバーチャルタウンスクエアが取り引きを促進するプラットフォームに似ています。そこでは 、プラットフォームが通貨の相互運用性をどのように支持するかに焦点を当てましたが、今日は資産の相互運用性に注目します。結局のところ、お金は他の資産と同じように金融契約、つまり借用書です。クロスボーダー決済を改良したい場合でも、資産取引の効率と安定性を確保したい場合でも、私たちは同じ場所に行き着きます。 

終わりに

ルールとインフラは、これからの国際通貨システムの全てとなるかもしれません。ハングルのように賢明で先見の明がなければなりません。 

韓国の偉大な哲学者で公務員の栗谷(ユルゴク)氏は、「全力で練習すれば、効率を上げて結果を出すことができる」と言いました。あとは行動あるのみです。ガムサ・ハムニダ!

IMFコミュニケーション局
メディア・リレーションズ

プレスオフィサー:

電話:+1 202 623-7100Eメール: MEDIA@IMF.org