米国経済のバランス回復

2023年2月16日

米連邦準備制度は、物価安定の回復と労働市場のバランスを企図して、利上げを継続してきた。米国では、新たに労働者を採用する需要が、就労可能な労働者の供給を超えており、失業率が過去50年超で最低水準まで低下し、物価上昇率の押し上げに寄与した。IMFの分析によると、経済のバランス回復を促進するためには、現行方針を維持して今年の金利を高水準に保つことが、インフレ緩和を後押しすることになる。金利高に伴い、失業率は一時的に上昇するだろう。しかし、高水準の金利が、安定的な物価上昇と持続的な経済成長への道を開くはずだ。そして、最終的に、将来において雇用創出を促進するだろう。

2021年に物価高が始まった当初、価格上昇が見られたのは、自動車などコロナ禍関連の混乱の悪影響を受けたモノに限定されていた。しかし、物価上昇は2022年前半までに、住宅、またホテルやレストランなど、各種のサービスにまで広がった。個人消費支出価格(PCE)指数が示す物価上昇は現在、5.5%であり、物価目標の2%を大幅に超える。

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過熱気味の労働市場

2021年半ばから米国経済は急回復を遂げ、労働力の需要が供給をはるかに上回り続けた。労働者が離職したり、転職を目指したりする確率が高まり、また、早期退職に伴って労働力の供給が減少した。これらの要因は、賃上げを求める労働者の交渉力を強め、賃金コストの増加をまかなうために企業が価格を引き上げる中、賃金・物価の両方の上昇に貢献した。この変化は、宿泊業や飲食業など労働集約的な産業で顕著だった。

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均衡の維持

米連邦準備制度の責務は、物価の安定と雇用の最大化である。IMF職員が、労働者の交渉力の強さと失業者1人あたりの求人数の多さを勘案した上で、米連邦準備制度のFRBUSモデルを用いて分析を行ったところ、同制度が金利を最大4〜5%に引き上げ、約1年から1年半、その水準で維持すれば、これらの責務を果たし得るという結果が導き出された。金利上昇に伴って、労働力需要が減少し、わずかに失業が増えるだろう。その結果、サービス部門を中心に賃金・物価の押し上げ圧力が弱まり、インフレ緩和に貢献することになる。

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現状

連邦公開市場委員会(FOMC)委員の大半は、2023年末においてフェデラルファンド金利がおよそ5%から5.5%で推移し続けるようにするために、金利をさらに引き上げることになると見込んでいる。こうした中、連邦準備制度の政策行動が狙い通りの効果を出しているという、望ましい兆候が見られる。2022年夏と比較すると、物価上昇ペースは同年最終四半期に減速した。この減速に貢献したのは、モノの価格の下落だ。しかし、高止まりしているサービス価格の上昇率は、賃金の伸びが減速して初めて、落ち着き始めるだろう。

安定的な雇用増加と持続可能な所得の伸びを中長期的に実現するには、連邦準備制度の物価目標である2%まで物価上昇率を引き下げることが肝要だ。また、そうすることで、一時的な失業率増加のコストを相殺できるだろう。