岡村健司 副専務理事による冒頭演説
2022年11月17日
皆様おはようございます。そして、世界中からオンラインで参加している皆さまを歓迎します。
ショックが発生しやすい世界における金融リスク管理に関する会議に東京で参加できることを嬉しく思います。
この非常に重要な会議を共催して下さった東京大学金融教育研究センターに感謝を申し上げます。ご協力いただきありがとうございます。
また、このイベントの開催にあたり組織のリーダーシップを発揮したアジア太平洋地域事務所の同僚に感謝しています。そして 創設25周年おめでとうございます。
見通し
これは非常に時宜にかなった会議です。私たちは、これまで以上にリスクが高くショックを受けやすい世界に生きています。
2023年は政策当局者にとって、見通しが厳しくなっています。
3つの強力な力が世界経済を抑制しているのです。
1) ロシアのウクライナ侵攻。
2) 生活費の危機が続き、インフレ圧力が拡大・長引く中で、金融政策を引き締める必要性。
3) 中国経済の減速。
1か月前のIMF年次総会でわれわれは、世界経済の成長率が昨年の6.0%から今年は3.2%に減速すると予測しました。 また、2023年の予測を2.7%に引き下げました。
金利上昇に伴い、金融安定性リスクが高まっています。政府系金融機関、ノンバンク金融機関の部門で脆弱性が高まっています。
一方、先進国の銀行は、世界金融危機後の規制改革の取り組みにより、より強い態勢が整っているようです。
新興市場国と発展途上国は、資本流出やドル高、不安定な一次産品価格の圧力にさらされています。
多くの国では、パンデミック中に債務水準が上がり、今も高止まりしています。世界的な金利上昇によって債務負担を維持することが困難な状況です。60%を超える低所得国と、25%を超える新興市場国が債務危機に陥っているか、陥るリスクにさらされています。
自然災害によっても、人的被害や経済的損失が発生しています。気候変動により、こうした災害が深刻かつ頻繁になっています。多くの進展がありましたが、残念ながら、気候変動の壊滅的な影響を緩和するために必要な政策がすべて導入されている状態からはほど遠いところにいます。
さらに、地経学的な分断化が、世界の生産と貿易のネットワークに打撃となり、成長とインフレに悪影響を与えるリスクがあります。
政策の優先事項
このような経済環境の中で、政策の優先事項は何でしょうか。
第1に、インフレ率を中央銀行の目標に戻すことです。これは、金融政策の方針を維持することを意味します。短期的には成長率の低下と失業率の上昇という点でコストを伴いますが、インフレを今制御できなければ、後に、はるかに大きく、長引く痛みを伴うことになります。不確実性が高い環境下では、金融政策を適切に調整することが課題となります。
第2に、パンデミックの間は広範な財政支援が適切な手段でしたが、長期的には持続不可能であり、インフレを後押しすることになります。代わりに、財政支援は的を絞り、最も脆弱な人々を物価上昇から守らなければなりません。広範なエネルギー補助金は避けるべきです。こうした対策は総じて、退行的で効果がありません。財政バッファーを再構築し、債務を削減しなければなりません。
また、G20共通枠組みの下での進展を基盤として、タイムリーで効果的、かつ協調性のある債務解決メカニズムを整備する必要があります。
第3に、資本流出に直面している国については、国別の助言をしています。一般に、柔軟な為替レートは、特に外貨債務が少ない場合に役立ちます。
一部の新興市場国では、金利政策やマクロプルーデンス政策、為替介入、資本フロー管理対策などの手段を組み合わせることが、金融政策のトレードオフを緩和し、金融安定性リスクを軽減することに役立つでしょう。
政策の優先事項に関する私の最後のポイントは、新たなショックに対する強靭性を構築する必要があるということです。
例えば、世界経済や金融システムに対する気候変動のリスクが高まっているほか、サイバー関連の脆弱性が次の大きなショックの要因となる可能性があります。
終わりに
結論に移ります。世界経済と金融システムは、パンデミックの後遺症とロシアのウクライナ侵攻にさらされています。ショックは今後、より頻繁になる可能性があります。バッファーを構築し、強靭性を強化することで態勢を整えなければなりません。
このような会議は、経験を共有し、お互いから学び、斬新なアイデアを生み出す理想的な場です。洞察に満ちたオープンな議論を楽しみにしています。
ご清聴ありがとうございました。IMFコミュニケーション局
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