第44回国際通貨金融委員会(IMFC)コミュニケ(仮訳)

2021年10月14日

米国・ワシントンD.C.)

1. 世界経済の回復は続いている。しかし、ワクチンへのアクセスと政策支援の顕著な相違を背景に、経済間のばらつきは根強く残っている。変異株の発生によって不確実性は高まっており、回復に対するリスクは下方に傾いている。気候変動やその他共通の課題が一層差し迫り、我々の緊急の注意を要する中、今回の危機は、貧困と不平等を悪化させている。

 

2. パンデミックの拡大を食い止め、ばらつきを抑制し、あらゆる場所で包摂的な回復を支援するために普遍的なワクチン接種を促進するには、強固な国際協力と即時の行動が必要とされる。この観点から、我々は多国間リーダーズタスクフォースの取組に感謝し、新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス及び現場での提供を加速することを奨励する。すべての国が、2021年末までに少なくとも人口の40%、また、2022年半ばまでに人口の70%にワクチンを接種するという世界全体の目標に向けて前進するために、我々は途上国におけるワクチンや必要不可欠な医療製品・原材料の供給を後押しし、関連する供給や資金調達の制約を取り除くための措置をとる。

 

3. 複雑な環境の中、我々は変化するパンデミックと利用可能な政策余地に合わせて国内政策を注意深く調整する。我々は、適切な場合には危機対応から、成長の促進及び、対応可能な場合には長期的な財政の枠組の強化を含む、債務持続可能性の維持に焦点を移行しつつ、保健関連の支出及び最も脆弱な人々の保護を引き続き優先する。中央銀行は、物価のダイナミクスを緊密にモニタリングしており、一時的なインフレ圧力を見抜くことができる。中央銀行は、インフレ期待の不安定化のリスクが具体化した場合には適切に行動する。政策スタンスに関する明確なコミュニケーションは各国間への負の波及効果の抑制に寄与し得る。我々は、的を絞ったマクロ・プルーデンス政策等を通じて、金融の脆弱性と金融安定性に関するリスクの監視を継続し、必要に応じ、それらに対処する。我々はまた、債務の持続可能性を回復するための各国の努力を支援し、債務者及び公的・民間の債権者双方による債務の透明性の慣行を強化しつつ、必要とする国への資金支援を供与するための包括的な行動をとっている。

 

4. 我々は、より強靭で持続可能な世界経済の構築を支援するべく、変革をもたらす改革の加速について協働する。我々は、COP26の成果に期待し、各国固有の状況を考慮しながら、パリ協定に沿った気候に関する行動をさらに加速させることに強くコミットする。この文脈で、我々は、最も脆弱な人々を保護しながら、温室効果ガスの排出を削減するための効率的な政策措置を含め、財政から・マーケット・規制の対応まで、あらゆる効果的な手段に基づくポリシーミックスを利用する。我々はまた、関連するリスクを管理しつつ、全ての国に便益が及ぶことを目指し、デジタル経済の可能性を解き放つために協力する。我々は、より強固な国際課税制度を導入する。我々は、2021年4月の、為替相場、過度な世界的不均衡、及びガバナンスに対する我々のコミットメント並びにルールに基づく貿易システムについての声明を再確認する。

 

5. 我々は、専務理事のグローバル政策アジェンダを歓迎する。

 

6. 我々は、加盟国がパンデミックからの持続的回復を達成し、その他の課題に対処するため、IMFが、最先端で状況に合わせたバイ及びマルチのサーベイランス並びに的を絞った能力開発を通じ、引き続き支援を行うことを歓迎する。我々は、リスクと不確実性のより適切な組み込み、予測と監視の枠組の改善、マクロ金融問題に対するIMFの関与の深化、データ提供と基準に関する取組等による、サーベイランス活動の継続的な改善を支持する。我々は、「統合的な政策枠組」等を踏まえた、資本フローに関するIMFの「機関としての見解」の見直しを期待する。我々はまた、脆弱国や紛争被害国を含む、脆弱な加盟国に対するIMFの関与の有効性を強化することを支持する。

 

7. 我々は歴史的なSDR配分を歓迎する。我々は、強固な対外ポジションを持つ加盟国が、低所得国及び脆弱な中所得国のために国内の手続に基づいてSDRを自発的に融通する選択肢について、その追求にIMFが取り組むことを支持する。我々は、長期的な財務の健全性を維持しつつ、貧困削減・成長トラスト(PRGT)を大幅に拡大することにコミットする。我々は、現在までにPRGTが受けた貢献誓約を歓迎し、より幅広い加盟国に対し、融資原資や利子補給金への更なる貢献を呼びかける。我々は、気候変動やパンデミックに関連するものを含め、将来の国際収支の安定にかかるリスクを減らすべくマクロ的に重要な改革に取り組む国に対し、利用可能な長期資金を提供するための、IMFにおける強靭性・持続可能性トラスト(RST)の設立を支持する。RSTはSDRの準備資産としての性質を維持するべきである。我々は、IMFに対し、RSTを発展・実施すること、その過程で世界銀行と緊密に協力すること、及び国際開発金融機関を通じたSDRの融通について実現可能な選択肢を探求するにあたっての技術的な支援を提供することを要請する。我々は、市場の能力を拡大するため、より多くのIMF加盟国がSDRの任意交換取極を締結するように求める。

 

8. 我々は、国際収支ニーズを抱える加盟国に対して、IMFが、より多くの高次クレジットトランシュ・アレンジメントを通じ、引き続き支援を行うことを歓迎する。我々は、パリクラブでも合意されている債務措置に係る「共通枠組」を適時に、秩序だった方法で連携して実施するための取組を強化するという、IMFと世銀の両者によって支えられたG20でのコミットメント及び、債務の持続可能性、透明性、再編に関するIMFの広範なアジェンダを歓迎する。我々は、IMFが、新型コロナウイルスや将来のショックに際して債務返済の猶予を提供するための大災害抑制・救済基金(CCRT)に対するドナーからの資金貢献を確保することを支持する。我々は、IMFに対し、サーチャージ・ポリシーのアップデートについて感謝し、プレコーショナリー・バランスの中間見直しの文脈においてIMF理事会で関連する分析がさらに行われることを期待する。

 

9. 我々はIMFに対して、持続的で包括的な構造転換を加盟国が達成することを支援するよう要請する。我々は、気候変動がもたらすマクロ経済や金融上のインプリケーションと、効果的な政策対応について、ガイダンスを求める加盟国からの多様なニーズに応えるというIMFの重要な役割を強調する。我々は、IMFが、そのマンデートと整合的な形で、パートナーとの効果的な連携を引き続き確保しつつ、気候変動・デジタルマネーを含むデジタル化・脆弱性・不平等がもたらすマクロ金融上のリスクやマクロ的に重要なインプリケーションについて、特定し対応するための作業を強化することを支持する。我々は、IMFがそのマンデートを実行するために必要なスタッフと技術を有するために、理事会に適切な予算資源を検討するよう求める。我々は、進行中の組織の現代化の取組を支持し、職員の多様性に関して更なる進捗を求める。

 

10. 我々は、グローバル金融セーフティーネットの中心にあり、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、クォータの十分性について再検討することに引き続きコミットし、2023年12月15日までに、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でIMFのガバナンス改革のプロセスを継続していく。我々は総務会への最初の進捗報告を歓迎し、次の会合までの更なる進捗を期待する。

 

11. 我々は、世界銀行の報告書「ビジネス環境の現状2018」の調査に係るレビューについてのIMF理事会のステートメントを歓迎する。

 

12. 次回IMFC会合は、2022年4月21日に開催される予定である。

 


 

国際通貨金融委員会

ハイブリッド参加者

2021年10月14日(木)・ ワシントンDC

 

議長

マグダレーナ・アンデション、財務大臣、スウェーデン

専務理事

クリスタリナ・ゲオルギエバ

 

委員会    

ムハンマド・アルジャドアーン、財務大臣、サウジアラビア王国

ムハンマド・ビン・ハディ・アル・フッセイニ、財務大臣、アラブ首長国連邦アラブ首長国連邦

黒田東彦、総裁、日本銀行(鈴木俊一財務相-代理)

ロスソム・ファドリ、総裁、アルジェリア中央銀行

ダニエレ・フランコ、経済・財務大臣、イタリア

クリスティア・フリーランド、財務大臣、カナダ

パウロ・ゲデス、経済大臣、ブラジル

マルティン・グスマン、経済大臣、アルゼンチン共和国

洪楠基、経済副首相兼企画財政部長官、大韓民国

マラング・カビディ・ムビュイ、総裁、コンゴ中央銀行

レセチャ・クガニャゴ、総裁、南アフリカ準備銀行

ブリュノ・ルメール、経済・財務・復興大臣、フランス共和国

パタイ・ミハーイ、、副総裁、ハンガリー国立銀行(マトルチ・ジェルジ、ハンガリー国立銀行総裁-代理)

ウエリ・マウラー、財務大臣、スイス連邦

ロヘリオ・ラミレスデラオ、財務公債相、メキシコ

ジャネット・イエレン、財務長官、アメリカ合衆国

ラース・ロード、総裁、デンマーク中央銀行

オーラフ・ショルツ、財務大臣、ドイツ連邦共和国

エリビラ・ナビウリナ、総裁、ロシア中央銀行(アントン・シルアノフ、財務大臣、ロシア連邦-代理)

ニルマラ・シタラマン、財務大臣、インド

アンドリュー・ベイリー、総裁、イングランド銀行(リシ・スナック、財務大臣、英国-代理)

ノル・シャムシアー・モハド・ユヌス、総裁、マレーシア国立銀行(ザフルル・テンク・アブドゥル・アジズ、財務大臣、マレーシア-代理)

ビンセント・バン・ペーテルゲン、副首相兼財務大臣、ベルギー

易綱、総裁、中国人民銀行


オブザーバー

アグスティン・カルステンス、総支配人、国際決済銀行(BIS)

クリスティーヌ・ラガルド、総裁、欧州中央銀行(ECB)

ヴァルディス・ドムブロフスキス、執行副委員長、欧州委員会(EC)

ランダル・クォールズ、議長、金融安定理事会(FSB)

ガイ・ライダー、事務局長、国際労働機関(ILO)

ロランス・ブーン、チーフエコノミスト、経済協力開発機構(OECD)

モハメド・バーキンド、事務局長、石油輸出国機構(OPEC)

アヒム・シュタイナー、国連開発計画(UNDP)総裁、国際連合

デビッド・マルパス、総裁、世界銀行グループ(WB)

ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ、事務局長、世界貿易機関(WTO)