第5回東京財政フォーラム 基調講演

2019年11月19日

質の高いインフラ投資(QII)

おはようございます。

国際通貨基金(IMF)を代表して、第5回東京財政フォーラムに皆様をお迎えし、2日間にわたり財政政策を巡る集中的な議論ができますことを、たいへん喜ばしく存じます。

私にとりまして、このフォーラムへの参加は、楽しみにしている恒例の行事となっております。会場内で多くの馴染みのある方々に会うことができ、うれしく思います。また、今年もこのフォーラムの共催者となって頂いた日本の財務省、およびADBIに御礼申し上げます。

本年の東京財政フォーラムでは、質の高いインフラ投資(Quality Infrastructure Investment:QII)と人口の高齢化という、二つの重要なテーマについて議論する予定です。

私からは、本日のテーマである質の高いインフラ投資についてお話ししたいと思います。これは、本年のG20議長国である日本の重要なイニシアティブです。

実に、質の高いインフラ投資イニシアティブに対しては、G20諸国すべてから全面的な支持が表明されました。

IMFは、インフラ投資の「質」の側面に改めて着目することを、強く支持してきましたが、私たちが何故これを重要な政策課題であると考えているか、ご説明したいと思います。

世界のほぼあらゆる地域において、インフラ投資のニーズが大きいということには、皆様もおそらく異論がないと思います。 貧弱な道路や信頼性を欠く電力網、低水準の教育施設などのインフラ面でのボトルネックの解消は、持続可能な経済成長や開発を実現する上での最優先の政策課題です。

質の高いインフラは、自然災害や気候変動の影響を軽減する上でも、重要であります。日本で最近発生した台風は、激しい洪水を発生させ、人命を奪いました。これは、質の高いインフラの重要性を改めて示すものです。

しかし、多くの国では、債務が増加する中で、競合する財政需要に対応するための財政余地が限られています。そのため、望むような規模でインフラ支出を拡大させることはできません。ですので、各国は、単に「より多く」使う代わりに、「より良く」使うことが求められているのです。

「より良く」使うための鍵は、支出額あたりのリターンが大きくなるよう、インフラ投資の「質」を向上させることです。もちろん、この点は財政状況がより良好な国々にとっても重要です。

私たちの分析によれば、インフラ支出は多くの場合、非常に非効率です。各国はインフラ投資による潜在的リターンを平均で約30%失っているのです。

例えば、同じリソースを投じたとして、道路を10キロ建設する代わりに7キロしか建設できていないということです。 非効率性は、電力などの主要なインフラサービスが十分に機能せずに、ビジネス活動が促進されにくいという形態を取ることもあります。

したがって、公共投資の質を高める余地が大きいことは明らかであり、公共投資支出の質を向上させることに注力すれば、各国は、より多くの、そしてより良い道路、学校、病院といった大きな利益が期待できるのです。

インフラガバナンスとIMF

それでは、どうすればよいのでしょうか。

ここで朗報があります。IMFの分析では、各国が正しい政策を採用し、インフラガバナンスを強化すれば、効率性ギャップを3分の2程度解消できることが示されています。

「インフラガバナンス」というのは、インフラ投資支出の計画・配分・実施のための制度と枠組みのことです。これには例えば、国家投資計画やプロジェクトの選定プロセス、プロジェクトモニタリングの枠組みなどが含まれます。

そこで、本日私から皆様に申し上げたいのは、力を合わせて、各国の「質」のギャップ解消に向けて取り組もう、ということです。

G20全体の質の高いインフラ投資へのコミットメント、とりわけ大阪サミットで合意された新たな「質の高いインフラ投資に関するG20原則」は、こうした取り組みを前進させる上で有益な役割を果たす、主要な柱です。

IMFは、OECDと共同でインフラガバナンスに関するノートを作成することで、こうした取り組みに貢献しました。このノートは、新たな質の高いインフラ投資原則が、実際にインパクトを持つように実施されることを助けるものです。

我々は、とりわけインフラガバナンス強化の分野において、加盟国が、質の高いインフラ投資原則を実施することを支援する準備があります。

重要なツールは、PIMAと呼ばれるIMFの「公共投資マネジメント評価(Public Investment Management Assessment: PIMA)」です。これについては、本日後ほど議論される予定です。

PIMAは、インフラガバナンスを評価するための枠組みであり、現状のシステムの強みを強調するだけでなく、弱点を特定し、それを是正するためのアクションプランを策定する上で有用です。

2015年以降、IMFは、世界全地域にわたり、あらゆる所得水準の58か国において、PIMAを実施してきました。アジアでは12か国でPIMAを実施しました。PIMAは、IMFが主導する評価チームに、世界銀行やアジア開発銀行のスタッフが密接に連携・参加することで、より良いものとなっています。

IMFが加盟国に直接行う支援は、IMFの分析業務によって、補完されています。IMFは、来年の早い段階で、”Infrastructure Governance: From Aspiration to Action”と題する新刊を出版する予定です。この書籍は本分野で私たちが集中的に取り組んできた業務の集大成となるものです。世界銀行やOECDのスタッフも寄稿しており、インフラガバナンスに関するグッドプラクティスを普及させるための、国際社会の共通かつ共同の取り組みを示すものとなっています。

私のスピーチの後に、IMFのスタッフが作成した、短いビデオをご覧いただきたいと思います。加盟国のインフラガバナンス強化を支援するIMFの取り組みが、うまく要約されています。

終わりに

最後に、IMFは、国際社会と強力に連携しつつ、この重要な分野において加盟国を支援する準備があるということを改めて申し上げます。

インフラガバナンスの強化へ向けてともに邁進し、本のタイトルにあるようにAspirationからActionへと歩を進めましょう。

今回のフォーラムが、皆様の間で経験を共有し、皆様の国において持続可能な経済成長の実現に向けた財政政策を策定することに貢献できることを願っております。

この度はご参加くださいましたことに、改めて御礼申し上げます。

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