持続可能な開発のための2030アジェンダに向けた 資金確保のためにお金を動かす

2019年9月26日

みなさま、こんにちは。ムハンマド=バンデ国連総会議長、このような重要な会合でお話しさせていただく機会を頂戴したことに御礼申し上げます。

まず、シンプルな事実を申し上げることから始めたいと思います。持続可能な開発目標(SDGs)は、どのような人であっても、生まれた場所がどこであっても、あらゆる人々が成功するために公正なチャンスを得られるようにと考案されました。

しかし、この約束を実現するための取り組みはシンプルではありません。この約束を実現するためには、今日最も重大な課題のいくつかに取り組むことが必要となります。気候変動がもたらす人類生存の脅威もそのひとつです。

1. 気候変動に今すぐ対策を

気候変動の影響がより具体的に表れるようになり、食卓や世代間、そして地球レベルでの対話のあり方が変わりつつあります。

気候変動はマクロ経済上重要な問題であり、国際的な協力を必要とします。国際通貨基金(IMF)は、政策助言や研究を通じて、こうした国際協力に深く関与しています。

私たちが優先しているのは、化石燃料の使用を大幅に削減する取り組みにおいて国々を支援することです。それは、地球の気温上昇を安全だと考えられている水準、すなわち工業化以前の気温と比べて2度以下の上昇に抑えるためです。パリ協定の下で現在なされている緩和の約束では、この目標に大きく手が届きません。

このことは、よりスマートな規制、グリーンエネルギー投資の拡大、財政政策の再考など、政策に関して総力を挙げる必要があることを意味しています。

ここでの重要な問題は、単純に炭素価格が低すぎるということです。

炭素価格が世界平均でCO2排出量1トン当たり2ドルというのでは、家庭や企業がエネルギーを節約し、よりクリーンな燃料に切り替える上での動機付けがもっと必要になります。地球の気温上昇を安全な水準に抑えるには、炭素価格が今よりもずっと高く、1トン当たり75ドル程度となる必要があります。

現在、この「正しい」価格設定に世界を導く上で一助となる戦略は様々あります。しかし、より成功率が高く、単純で、単一の戦略はあるでしょうか。

間もなく公表される「財政モニター」に掲載されたIMFの新しい研究では、炭素税が最も強力で効率的なツールであることが示されています。ただし、それは炭素税が公正で成長に配慮したかたちで導入される場合に限ります。重要なのは、単に新しい税を追加するのではなく、税制を再編することです。

その良い例があります。スウェーデンは1991年に炭素税を導入しましたが、その際、エネルギーコスト上昇を相殺するために低・中所得世帯がより多くの所得移転と減税を受けられるようにしました。こうした政策転換は、スウェーデンが1995年以降、炭素排出量を25%削減する上でプラスに働きました。そして、この期間にスウェーデン経済は75%以上も成長したのです。

今日、多くの国がさらに先に進むことを望むようになっています。

炭素税がもたらしうる大きな歳入について考えてみてください。GDPの1~3%になると推定されています。こうした歳入があれば、過大な影響を受ける世帯に対象を絞った事前援助の財源を確保し、クリーンなエネルギーインフラ分野の企業や投資を支援することができます。また、最終的には、持続可能な開発目標のための資金を調達できるのです。

2. 経済・社会開発の促進

この点に関連して、持続可能な開発目標の経済的・社会的側面についても触れたいと思います。2030アジェンダのこうした側面は、発展途上国だけでなく、すべての人にとって、貧困と欠乏のない世界、より公正な世界を創造するのに役立つよう、考案されました。

これまでに実現した成果を土台にできるという点は朗報です。この30年で乳幼児死亡率は半減し、10億人を超える人々が極度の貧困から脱することができました。

こうした成果は、特にグローバルな統合が進む中で、開発努力がいかに有効となりえるかを端的に示しています。しかし、やるべきことはまだ多くあります。多くの国にとって、つまり、持続可能な開発目標達成のための歳出を大幅に拡大することです。

私たちは、低所得途上国では毎年、医療や教育、優先インフラといった重要分野で追加歳出が必要となり、2030年にはこうした追加支出額が5,000億米ドルに達すると推定しています。これは、2030年の低所得上国全体のGDPと比べると、その約15%に相当する額です。

では、どうすれば持続可能な開発目標のために資金を動員できるでしょうか。

まず自分の足元から責任を果たさなければなりません。国内におけるマクロ経済管理の強化や歳入拡大、より有効な歳出計画の実施などです。

多くの国では、汚職対策を向上させる余地が残っています。民間セクターがその役割を果たせるように、よりビジネスに適した環境の整備をさらに行うこともできるでしょう。それには、投資に配慮した法規制枠組みを導入することも含まれるでしょう。

ベトナムでは、歳入確保と包括的な改革により、世界の最貧国のひとつから中所得国への変容が促されました。そして、ベトナムは今や持続可能な開発目標へ向けて順調に前進すると期待されています。

G20によって開始された「アフリカとのコンパクト」では、同様の変容を目指す国々を支援しており、私たちは投資家がこうした機会に気付くことを願っています。

IMFとしては、他の国際機関とともに、増大する能力開発ニーズに応え、持続可能な開発目標の進展を支援すべく取り組んでいます。例えば、歳入確保に関して、私たちはこの3年間だけでも支援を約50%拡大させました。

とはいえ、国内資金を増加させるだけでは十分ではありません。大きな努力によっても、持続可能な開発目標に必要とされる資金の4分の1にしかならないと見られています。

もし各国が目標を達成しようとするなら、国際金融機関やドナー国からの資金支援が重要となります。特に、重い債務負担を抱える国々にとっては、それが大きな効力を発揮する可能性があります。私たちは、低所得途上国の43%が過剰債務に陥っているか、またはそのリスクがあると推定しています。

贈与(グラント)や譲許的融資、市中からの資金調達を組み合わせる「ブレンド・ファイナンス」などの新しいアプローチも、大きな投資ギャップを埋める上で有益となるでしょう。

そして、持続可能な投資セクターについても考える必要があります。投資会社はすでに様々な形態のインパクト投資やグリーンボンドやESG投資商品を提供しています。投資会社は、各企業がビジネスモデルを持続可能な開発目標に合致させることを促す投資商品を新たに拡大することにより、さらに先へと進むことができるでしょう。

終わりに

結論ですが、持続可能な開発目標と気候行動のための資金動員には、創造性と粘り強さ、国内外におけるこれまでにない規模の協力が必要となります。

来月、IMFの年次総会が開かれますが、気候変動対策のための財務大臣連合(Coalition of Finance Ministers for Climate Action)の会合を含め、気候変動の諸問題が大きく取り上げられることになる点を喜ばしく思っています。

私たちに共通の責任とは、世界が経済成長の減速と不確実性の増大に直面する中にあっても、この開発アジェンダが進む勢いを加速させることであるはずです。

であるからこそ、IMFと国連、他機関は「誰もが成功するための公正なチャンスを得られるようにする」というシンプルな考えへの支持を新たにしつつ、今後も連携して取り組んでいきます。

ご清聴、ありがとうございました。

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