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東京の高級ショッピングセンター、「ギンザシックス(GINZA SIX)」。日本経済は今年プラス成長したが、賃金と生産性の成長には構造改革が必要(写真:Michiko Takei/Jiji Press/Newscom)

日本経済にとって構造改革を一段と推進するべき時は今

2017年7月31日

日本経済は今年も、貿易の回復と一時的財政出動によって1.3パーセントのプラス成長が見込まれています。しかし、IMFによる日本経済の年次レビューによれば、急速に進む高齢化と労働力人口の減少という課題に直面する日本は、賃金の伸びと生産性改善、成長を促進するために構造改革を加速的に実行する必要があると指摘しています。

このインタビューでは、今年の第4条協議を率いたトッド・シュナイダーがアベノミクス(「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「構造改革」の3本の矢)と日本の人口動態の変化、そして何十年も続いたデフレと低成長を日本が脱却するための主要な優先課題について語ります。

今年の日本経済の見通しは?

2016年は比較的好調な年となり、そのモメンタムが2017年も続いて、今年は1.3パーセントのプラス成長が見込まれています。これは主に良好な外部環境によるもので、日本の場合は輸出増を意味します。2016年8月に可決された一時的財政出動の効果も次第に現れ始め、経済成長に寄与しています。

しかし、基調的な国内の民間消費や投資はまだ弱く、低インフレ状態がしぶとく残っており、中期的な成長の持続にとってリスクとなっています。

日本経済にとってデフレが引き続き課題とのことですが、日銀が 2016 年に投融資促進を目的として行った金融政策枠組みの強化によってインフレの押し上げ効果はありましたか?

日銀は2016年後半に金融政策を総括的に検証した結果、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)と、2%を物価目標とするオーバーシュート型コミットメントの2つを導入して枠組みを強化しました。国債の具体的な年間購入金額目標から、イールドカーブの形状の直接コントロールへと枠組みを変更したのは、金融政策の機動性と持続可能性を高めてその効果を改善することが狙いです。

では、インフレ押し上げ効果はあったのでしょうか?イールドカーブコントロールがインフレと経済に与えた全体的な影響を評価するにはまだ時間が必要です。しかし、新たな枠組みに一定の効果はあったといえます。利回りのボラティリティは縮小し、超長期金利の上昇は、低金利環境で苦しんできた機関投資家にある程度の恩恵を提供しています。

消費支出拡大につながる賃金の伸びも伸び悩んでいます。日本のインフレ動向懸念に賃金がどのように関係し、なぜそれが経済全体にとって重要なのですか?

失業率は25年ぶりの低水準まで改善し、求人倍率は過去最高となっていますが、「正規雇用」(フルタイムの従業員)の労働者の賃金上昇圧力はまだみられません。賃金上昇は家計所得の伸びにつながり、ひいては消費拡大とインフレ押し上げをもたらすため重要です。

日本の 賃金の低成長 は一部、限定的な労働移動性や生涯雇用、雇用の保障を好む傾向など、構造的な要因によるものですが、足元のインフレ率に連動する基本給交渉もまた1つの要因です。先程述べた通り、今年のインフレ率はそれほど上昇していません。

企業間の労働移動促進や、契約改革を通した給与と労働条件の格差解消を推進し、「同一労働同一賃金」の徹底を図るなど、賃金と成長を促進するための労働市場改革を行うことで、資源の配分が改善され、賃金上昇圧力が高まって再びインフレが促進されるはずです。

日本の急速な高齢化と労働力人口の減少が日本経済の将来に大きく影響するといわれていますが、人口動態上の課題克服に向けて政府は何ができますか?

人口動態の変化と、労働力人口の継続的な減少見通しに照らし、日本は、例えば正規(フルタイム)社員として同一労働同一賃金ベースで女性をもっと多く採用するなど、労働力をより効率的、そして包摂的にする必要があるでしょう。そのためには、例えば、労働契約改革、フルタイムの正規雇用に対するディスインセンティブの撤廃、保育所や老人介護施設の増設などが必要となるでしょう。政府はこうした課題の多くに「働き方改革」プランを通して取り組んでいますが、一段と加速させる余地があります。

中小企業向けの効率的な信用供与を目的とした金融セクター政策は、革新、生産性向上、投資を促すでしょう。同じように重要な点として、日本の金融機関、特に地方銀行や信用金庫は、長引く低成長と低金利環境だけでなく、高齢化と労働力の減少にも適応しなくてはならないことが挙げられます。つまり、ビジネスモデルの転換(手数料ベースの収入源開拓やコスト削減、統合など)や、新規分野で収益を追求する際は新たなリスクに注意することなどです。

消費税増税は二度にわたって延期されました。日本政府にとって消費税増税の実現がなぜまだ重要なのですか?

それが重要な理由は2つあります。1つは、日本の公的債務は対GDP比で240パーセントに上るということです。これはG7諸国の間でも突出しており、IMFスタッフの予測では現行政策の下、持続不可能とされています。公的債務の安定化と最終的にはその削減に向けて、消費税増税は一歩前進を意味します。2つ目の理由は、人口高齢化に伴い、社会保障支出、特に医療費の需要が高まるためです。これらのコストを削減するためには歳出改革が必要ですが、こうした重要な公的支出のために追加の財源も必要です。また、日本の消費税率は他国に比べて低いのですが徴収効率は高く、大幅な税収増が見込まれます。日本政府に私たちが提案している漸次的な増税は、包括的な財政再建計画の一部となるべきものです。

日本では過剰な消費が特に問題となっているわけではないので、なぜ所得税でなく消費税なのか、と疑問に思う人達もいます。所得税も、不平等の解消や労働ディスインセンティブの撤廃、課税ベースの拡大など、改革が必要です。しかし、労働所得は家計支出にとって不可欠なものであり、所得税増税は逆効果になりかねません。しかし、消費は誰もが行う活動なので、消費税は全年齢層で幅広く負担されることになります。そのほか、不動産税や相続税、資産税なども、消費税増税に加えて考慮する価値があるでしょう。

日本の主要な優先課題

より持続可能な高成長を促進するため、日本には以下が必要:

  • 金融政策と財政政策の組み合わせと所得政策(賃金上昇)により、足元の景気モメンタムを維持する。
  • アベノミクス第三の矢である構造改革、特に賃金や投資、生産性のボトルネック解消を目指す労働市場改革に改めて注力する。
  • 期待値を設定し、信頼感を高めるとともに公的債務を持続可能な軌道にのせるための、信頼に足る中期的財政枠組みを含めた政策枠組みを強化する。
  • 低金利環境と高齢化・人口減少の影響に伴うまだよく理解されていない未知のリスクを含め、金融セクター政策を強化する。
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