Typical street scene in Santa Ana, El Salvador. (Photo: iStock)

写真:Gopixa/iStock by Getty Images

IMF サーベイ・マガジン : 開発のための資金:ポスト2015年 開発アジェンダとIMFの役割

2015年7月8日

  • IMF、全譲許的融資のアクセスを50%拡大へ
  • 自然災害や紛争で苦しむ低所得国を対象にゼロ金利
  • 国内の歳入の可能性を引き上げるための支援を拡大、平等と包摂性を一段と重視

際通貨基金(IMF)は、ポスト2015年の持続可能な開発目標(SDGs)の実現に取り組む途上国により良い支援を行うため、金融支援を強化するとともに、戦略的分野で政策助言、技術支援及び能力構築を強化するとした一連の提言を承認した。

カンボジア・カンポン・トララックの子供たち:IMFの措置は低所得国向け融資資金の拡大に資する(写真: Michael Nolan/Robert Harding World Imagery/Corbis)

カンボジア・カンポン・トララックの子供たち:IMFの措置は低所得国向け融資資金の拡大に資する(写真: Michael Nolan/Robert Harding World Imagery/Corbis)

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

7月8日にクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事がブルッキングス研究所で行った演説で明らかとなったこれら一連の措置は、来週アディス・アベバで開かれる第3回国連開発資金会議(FfD)でさらに議論される予定である。

会議で協議される主な点の多くは、IMFのマンデート(責務及び権限)の中核と位置づけられ、国内の歳入確保、歳出の効率性と効果、資本フローを呼びこみ管理する、公共投資の賢明な拡大といった国内政策事項、並びに国際金融の安定性の維持や国際課税での協力といった国際的な政策事項が含まれる。

またIMF理事会は7月1日、IMFの低所得国へのコミットメントをさらに強化するために、以下の変更を承認した。

• IMFの全譲許的制度へのアクセスを50%拡大する。これは、適格性を有する低所得国がより多くの金額を借り入れることができることを意味する。

• 譲許的融資で、最貧国・債脆弱国をより重視する。

• ラピッド・クレジット・ファシリティ下で供与された全融資の金利をゼロとする。自然災害の被害にあった国や脆弱国・紛争後の国を対象。

IMFの朱民副専務理事は「我々は、最も貧しい人々をはじめとする世界の何十億という人々の生活にプラスの変化をもたらす機会を手にしている」と述べた。同氏は、開発のための資金に関するIMFの業務を統括している。「これを現実にすべく、IMFは技術支援、サーベイランス及び融資を強化している」

2015年世界開発アジェンダ

「開発資金会議」は、9月のニューヨークでの持続可能な開発目標サミット、及び12月のパリでの国連気候変動会議とともに、国際的な主要イベントのひとつと位置づけられており、これら3会議により2015年は国際開発の重要な年とされている。

FfD会議は、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に必要な資金をどのように確保するかについての理解を共有するためのものである。SDGsは9月のサミットで正式に採択される予定で今年期限を迎えるミレニアム開発目標の後継となる。現在SDGsは2030年を期限に、貧困を終わらせ、全ての人々の生活を大きく改善し、地球を保護することを重視した17の明確な目標から成っている。

第1回国連開発資金会議は、2002年にメキシコ・モンテレーで開かれた。同会議の終了時に発表された声明は「モンテレー合意」として知られる。2002年と同様、IMFは今年の会議でも貢献が期待されている。

IMFの戦略政策審査局で、この面での取り組みで指導的立場にあるショーン・ノーラン副局長は「加盟国が世界中に広がり経済の成長と安定性を推進するというマンデートを有するIMFは、ポスト2015年開発アジェンダに貢献できる立場にある」と述べた。「我々は、ポスト2015年開発アジェンダの視点から、我々の融資制度と助言サービス及び能力開発サービスを見直し、現在の我々の貢献を強化することができると確信する複数の分野を特定した。我々の理事会は、低所得国を対象にしたIMF資源のアクセスの拡大をはじめとする一連のイニシアティブに関する提言を承認した」

頑健な経済の構築に取り組む低所得国を支援する

低所得国を対象にアクセス及び譲許的条件を拡大したことに加え、政策助言、技術支援、及び能力開発の強化が、IMFが行える最大の貢献のひとつである。これらを通し、加盟国が経済の耐性を構築し各々の開発のための資金を調達し持続可能な目標を実現するという責任を果たせるよう支援する。

政策助言と分析作業の強化の対象は、マクロ経済的に関連のある貧困、平等、及び包摂性に関する事項も含む。IMFの業務にこれを統合し、加盟国と連携するとともに他の関係国際機関の専門知識や経験を活用することを目標としている。

またIMFはエネルギー価格の設定や環境税の問題への取り組みを継続するとともに、途上国に対し管理が容易な炭素価格設定の計画の策定で技術支援を行い支援していく。

IMFはその開発資金イニシアティブの一環として、税政策と税行政で国内の能力構築を図る途上国への支援を強化するとともに、途上国に特に関係のある国際課税への取り組みも拡大する。

既にIMFは能力開発の分野での取り組みの約5分の1を税政策と税行政への支援に振り分けているが、さらなる資源が新たな措置のもと割り当てられることになる。

さらに、大きなインフラギャップにより効率的かつ持続的に対処できるよう、効果的なインフラ支出に必要な公共投資管理の重要な分野で助言と技術支援を行い、加盟国を支援する予定である。また、公共投資、成長及び債務の持続可能性の関係性に関する分析を強化し、インフラ支出拡大の適切なペースの特定に貢献することになる。

脆弱国・紛争の影響下にある国

IMFは、業務活動、及び中期的な能力開発への支援の双方で、脆弱国と紛争の影響下にある国との関係性を強化する。能力開発の面での活動は、主な開発パートナーと密接に連携し対象国政府自らの優先事項に合致した戦略に組み込む必要があるだろう。さらに、IMFの譲許的融資は最貧国をターゲットとするとともに、ラピッド・クレジット・ファシリティのもとでの融資の金利はゼロ金利を維持する。