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政府内の腐敗に取り組む

ヴィトール・ガスパール パオロ・マウロ パウロ・メダス著

汚職等、腐敗のリスクと無縁の国などない。公職に就く者が私的な利益のために職権を乱用する腐敗という行為によって、政府や諸機関に対する市民の信頼が損なわれ、公共政策が有効性と公正さを失い、国民が納めた税金は学校や道路、病院から奪い去られる。

公的資金の浪費もさることながら、腐敗のコストは浪費そのもの以外にも存在する。市民全体に利益をもたらすような経済成長を支える政府の能力が、腐敗によってむしばまれていく。

しかし、透明かつ堅固な制度を確立しようという政治的意思によって、腐敗を食い止めることは可能である。IMFによる最新の「財政モニター」では、税務行政や調達慣行といった財政機関と財政政策に光を当て、こうした分野で腐敗と戦う方法を提示している。

腐敗は脱税を助長する

私たちが180か国以上を対象に分析を行った結果、腐敗度が高い国ほど徴税額が少ないことが明らかになっている。リベートと引き換えに用意された抜け穴を利用するなど、国民が賄賂を払って納税を免れるためだ。納税者は自国の政府が腐敗していると考えている時に、脱税を行う傾向が強い。

全体的に見ると、経済発展が同程度の国々を比較した場合、腐敗度が最低水準の国の政府は腐敗度が最高水準の国よりも、対GDP比で4%多く税収を得ている。

改革を実施した結果、歳入がそれ以上に増加した国もある。例えばジョージア(グルジア)では、腐敗が著しく改善されたことで、2003年から2008年の間に税収がGDP比で13%ポイント増加し、以前の2倍以上になった。ルワンダでは、1990年代半ばに開始した腐敗撲滅に向けた改革が実を結び、税収が対GDP比で6%ポイント増加した。

また、腐敗がはびこる国では天然資源がもたらす富の恩恵を人々が十分に受けられない。石油や鉱物の採掘は莫大な利益を生み出すゆえに、腐敗の強い動機となる。私たちの研究からは、天然資源が豊富な国々では、平均的に見て、制度が脆弱で腐敗度が高いことが明らかとなっている。

腐敗によって国民の税金が浪費される

最新の「財政モニター」によると、腐敗認識度が低い国では公共投資プロジェクトにおける浪費が著しく少ない。新興市場国を見てみると、腐敗度が最高水準の国は腐敗度が最低水準の国の2倍も資金を無駄にしている。

 腐敗は教育に害を及ぼす 2019年4月 第2章 chart 2

公共調達のリベートや不正入札から生じる超過コストを政府が税収で賄うことは、国民が納めた税金の無駄使いである。したがって、腐敗行為が少なければ、税金はより効率的かつ公正に使われることになる。

腐敗は、政府にとっての優先順位を歪めるものでもある。低所得国を例にとると、腐敗度の高い国では教育と保健医療に充てられる予算の割合が3分の1低い。社会支出の有効性も影響を受ける。腐敗度の高い国ほど、学齢期の子どもは学力テストの得点が低いことが明らかになっている。

一部の国々の石油企業や、電気・水道会社のような公益事業会社などの国有企業でも、腐敗は問題となっている。私たちの分析によると、腐敗度の高い国ほど、これら国有企業の効率性が低いことが示唆されている。

政治的意思があれば、道は開ける

腐敗と戦うためには、公共部門全体で清廉さと説明責任を促進する、堅固な財政制度を創り出そうという政治的意思が必要となる。

私たちの研究に基づき、腐敗に対する脆弱性の解消に有効な制度を構築していく上で国々の参考となる教訓を以下に提示しよう。

腐敗の抑制は、様々な分野での粘り強い努力が必要とされる課題であるが、見返りは大きい。その出発点となるのが、政治的意思、清廉さと説明責任の促進に資する制度の継続的な強化、そして国際協力である。

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