IMFの短期流動性枠(SLL)

2022年5月19日

短期流動性枠(SLL)は、政策枠組みやファンダメンタルズが非常に強固である加盟国を対象に、国際収支面の困難をもたらす外的なショックの結果、大規模でない流動性を短期的に必要としうる場合に利用できる流動性の面での安全策として設計されている。

短期流動性枠は、パンデミックが勃発した当初に世界的な不確実性が高まり流動性の需要が拡大した2020年春に国際通貨基金(IMF)が設立した。この流動性の安全策は、IMF融資制度や、国際金融のセーフティネットの他要素を補完するものである。短期流動性枠はショックがより深刻な危機へと発展し、他の国への波及効果が生じるリスクを最小化することを目的としている。

流動性の安全策

短期流動性枠は一般資金勘定(GRA)の中に特別な制度として設けられている。スワップのような流動性を供給するために設計されており、リボルビング型の融資などの革新的な特徴がある。

  • 短期流動性枠は、国内で発生するショックではなく、対外的な動向に伴って生じる資本収支圧力に関連した大規模でない国際収支ニーズが短期的に発生しうる場合を想定して設計されている。通常の年間利用額はクォータ(出資割当額)の145%である。
  • 個々の短期流動性枠の取極期間は12か月間である。加盟国が資格を維持し、特別な国際収支上の必要性がある限り、これに続く取極が承認されうる。
  • 短期流動性枠はリボルビング式で利用できる制度で、この制度に基づく個々の融資取極の中で、また複数の融資取極をまたいで、全額もしくは一部の買い入れと買い戻しを繰り返すことができる。買い戻しをすることで、加盟国の承認された利用上限額まで再び買い入れる権利が復活することになる。

低コスト(特に予防的に活用された場合)

  • 短期流動性枠には特別な料金体系が設定されており、返金されないコミットメント費(8ベーシスポイント)とサービス料(21ベーシスポイント)が課される。
  • 短期流動性枠は、利用枠の規模が同水準だと、純粋に予防的に活用された場合、フレキシブル・クレジットライン(FCL)よりも安価である。
  • 加盟国が短期流動性枠から引き出すと、通常手数料、また、借入額に応じた追加手数料が課される。短期流動性枠は、対象となるショックの性質を踏まえ、繰り返して活用されることを想定し設計されている。加盟国が2回引き出した場合、融資枠の水準が同様の場合だと、フレキシブル・クレジットラインと同程度の利用料金で活用できる。
  • 準備金と比較しても費用を節約でき、政策の力強さについて望ましいシグナルを発信できるため、政府債務の利回りが低下することからも恩恵を受けられる可能性が高い。

国のニーズにあった革新的な特徴

  • 短期流動性枠はフレキシブル・クレジットライン同様に事後の条件がなく、審査もない。
  • IMF理事会は融資枠の提供を「提案する」ことを承認する。この融資枠の設定は、政府当局が2週間以内に文書に署名して通知する「受諾」次第である。
  • 一定の要件が満たされる場合、文書による連絡上、中央銀行だけが署名者となることも可能となる。国際収支上のニーズの規模が限定的であり、政策の微修正のみが必要であると見込まれるため、関連する政策ツール(為替調整、為替介入、金利変更)はすべて中央銀行の管理下に置かれていることが典型的である。

非常に強固な政策とファンダメンタルズを備えた加盟国が対象

 

 

1 短期流動性枠(SLL)とフレキシブル・クレジットライン(FCL)の主な特徴の比較

 

 

SLL
短期流動性枠

FCL
フレキシブル・クレジットライン

制度

特別ファシリティ

クレジット・トランシュ

方針

スワップのような流動性支援を国際収支上の特別なニーズを持つ非常に安定した加盟国を対象に提供する。

非常に安定した加盟国を対象に、国際収支上のいかなるニーズにも対応できるように支援する。

国際収支上のニーズ

国際収支面で大規模でない問題が短期的に発生するリスクがあり、国際資本市場でのボラティリティが要因で加盟国の資本収支への圧力や、準備金に反映されている。

種別を問わない。

条件

次の評価に基づく。

  • 非常に強固なファンダメンタルズと制度的な政策枠組み
  • 強力な政策(過去、現在、そして今後も強力な政策を維持するという強い意志)

買い戻し期間

12か月

3年3か月から5年

利用枠

クォータの最大145%
リボルビング式で利用可能

上限なし

融資取極の期間

12か月

1年から2年

料金

特別な料金体系が適用される。

  • 返金不可のコミットメント費(8ベーシスポイント)
  • サービス料(21ベーシスポイント)
  • 通常手数料
  • 融資額の水準に応じた通常の追加手数料。短期流動性枠は融資期間に応じた追加手数料の対象として考慮されない。

 

クレジット・トランシュに基づき適用される通常の手数料。

  • 通常のコミットメント費体系(クォータの115%以下に15ベーシスポイント、クォータの115%超575%以下に30ベーシスポイント、クォータの575%超に60ベーシスポイント)が適用される。引き出しが行われた場合に払い戻される。
  • 通常のサービス料(50ベーシスポイント)
  • 通常手数料
  • 通常の追加手数料体系

発効

IMF理事会が「融資枠の提供を提案」することを承認し、加盟国から署名された文書での連絡をIMFが受領したことを確認した時点で取極が発効する。この文書での連絡には「融資枠の提供」を受諾する旨、また政策面での約束が記載されている必要がある。事前に理事会の非公式会合を設ける必要はない。

IMF理事会が取極の要請を承認した時点。事前に理事会の非公式会合を開く必要がある。

署名

調整が必要な場合、想定される調整が限定的であることを踏まえ、文書での連絡には中央銀行の署名だけで済む場合もある。

フレキシブル・クレジットラインの下で対応できる国際収支上のニーズの幅広さを踏まえて、中央銀行と政府の両方が文書での連絡に署名することが一般的である。

事後条件

なし

なし

審査

なし

2年間の取極の適格性を審査する年次評価。

後継となる取極

適格性が持続しており、国際収支上の特別なニーズが潜在的に存在するとIMF理事会が評価した場合に制限なし。

外部的なリスクが低下するに応じて、取極の終了が想定されている。